記憶を消してもう一度観たい!映像と世界観に心を奪われる神アニメ映画10選【アニメ編①】
1.未知の世界へ踏み出す——冒険の感覚がよみがえる神アニメ映画
『千と千尋の神隠し』——知らない世界で、自分の名前を取り戻す

2001年製作・2001年7月劇場公開/監督・脚本:宮﨑駿/出演:柊瑠美、入野自由、夏木マリ ほか
両親と引っ越し先へ向かっていた10歳の少女・千尋は、奇妙なトンネルの向こうにある町へ迷い込みます。そこは夜になると神々が訪れる世界でした。両親を救い、元の世界へ帰るため、千尋は湯婆婆が経営する湯屋で働くことになります。
この作品は、不思議な世界を最初からすべて説明するのではなく、千尋と同じ目線で、周囲の人々や表情、動きを見ながら、この場所で生きる方法を覚えていくことで、千尋と自分を重ねて映画の世界へ没頭させてくれます。
冒頭の千尋は、肩を落とし、足取りも重く、両親の後ろをついて歩くような内向的な子供です。ところが湯屋で働き始めると、走り方、姿勢、人へ向ける視線が少しずつ変化します。千尋の内側の成長を台詞だけで説明だけではなく、キャラクターの演技を細かく描写することによってしっかり見せています。
湯屋の内部には、働く者たちの動線、食事、清掃、上下関係が細かく描かれているため、幻想的な舞台でありながら生活の実感があり、本当にその場所が存在するように感じられるようになっています。湯屋のわいわいとしたにぎやかさと、電車が水面を進む静けさの対比も見事で美しく描かれています。
大きな事件が起きるけれど、食べる、眠る、働く、誰かを名前で呼ぶといった日常的な行為が、人の心を支えているのだと感じさせてくれる作品です。少し不気味で、奇妙で、ちょっと怖い、それでもどこか懐かしい世界を堪能してください。
『もののけ姫』——森と人間、どちらか一方を正義にはできない

1997年製作・1997年7月劇場公開/監督・脚本:宮﨑駿/出演:松田洋治、石田ゆり子、田中裕子 ほか
村を襲ったタタリ神から呪いを受けた青年アシタカは、その原因を確かめるため西へ旅立ちます。たどり着いた場所では、森を守る神々と、人間の暮らしを築こうとするタタラ場の人々が激しく争っていました。
森に育てられたサンは人間を憎み、タタラ場を率いるエボシ御前は森を切り開きます。しかし、どちらかを単純な悪役にするわけではありません。エボシは自然を傷つける一方、様々な理由で社会から追いやられた人々へ仕事と居場所を与えています。森の神々も美しく穏やかな存在だけではなく、事前を傷つける人間に激しい怒りと暴力を持っています。
アシタカは争いの外から来た人物ですが、両者の間へと入り、すべての生きる者たちが憎しみに飲まれない道を探します。その姿勢は、対立をきれいに解決するヒーローというよりも、矛盾を抱えたまま泥臭く生きる人間に近いものとして描くこと物語を深く考えさせるような構造になっています。
動物の重量感、弓を引く力、地面を蹴る脚、刃物が当たった瞬間の衝撃。様々なアクションには強い重さがあり、現実のようなリアリティがしっかりと描かれています。特にヤックルの走りや山犬の跳躍は、骨格と重心を感じさせながら、人間とは異なる動物のリズムを見せています。
爽快な冒険を期待すると重く感じる場面もあると思います。しかし、自然、人間、科学技術、共同体を一つの答えへ閉じ込めないからこそ、観終わったあとも考え続けたくなる作品です。
© 1997 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, ND
『天空の城ラピュタ』——空に浮かぶ城へ近づく、その高揚感をもう一度

1986年製作・1986年8月劇場公開/監督・脚本:宮﨑駿/出演:田中真弓、横沢啓子、初井言榮 ほか
鉱山で働く少年パズーの前へ、空から少女シータが降ってきます。彼女が持つ青い石には不思議な力があり、政府の特務機関と空中海賊ドーラ一家がその秘密を追っていました。二人は、パズーの父が見たという空に浮かぶ城「ラピュタ」を目指します。
物語の入り口は、「空から少女が降ってくる」というシンプルなイメージで、そこから鉱山の町、蒸気機関、飛行船、雲の中の雷へと、世界が次々に広がっていきます。
パズーとシータは互いに手を取り合い、走り、よじ登り、落ちそうになれば互いを支え合います。物語中の二人の移動には常に高さと重力があり、「下へ落ちるかもしれない」という恐怖が、空を飛ぶ喜びをさらに大きく表現しています。
ドーラ一家のにぎやかな動き、軍の規則的な隊列、ロボット兵のゆっくりとした歩行。それぞれの集団とキャラクターに異なる動きのリズムが与えられているため、シルエットだけでも性格と役割が伝わってくるようなつくりになっています。
そしてラピュタへ近づく場面では、長く語られてきた場所が少しずつ姿を現し、未知の場所を探して自分の目で発見するという冒険の喜びが、音楽と画面の奥行きによって一気に高まります。
子どもの頃に観た人はもちろん、大人になって初めて観る人にも届く王道の冒険映画です。行き先を知っていても楽しい作品ですが、やはり初見でのわくわくが最高の映画です。
(C)1986 Studio Ghibli
2.都市・夢・現実が揺らぐ——画面の奥へ引き込まれる神アニメ映画
『AKIRA』——巨大都市の熱と破壊が、画面からあふれ出す

1988年製作・1988年7月劇場公開/監督:大友克洋/脚本:大友克洋、橋本以蔵/出演:岩田光央、佐々木望、小山茉美 ほか
第三次世界大戦後の2019年、再建されたネオ東京。暴走族の少年・金田と仲間たちは、深夜の道路で対立グループと激しい抗争を繰り広げます。その途中、仲間の鉄雄が奇妙な少年と接触し、軍の施設へ連れていかれます。やがて鉄雄の中で、制御できない力が目覚め始めます。
公開から長い年月がたっても、本作の都市描写が放つエネルギーは衰えることはなく。高層ビル、看板、配管、群衆、デモ、軍隊、崩れた道路。背景には膨大な情報が描き込まれ、都市そのものが一つの生き物のように動いています。
冒頭のバイクチェイスでは、暗い道路に赤いテールランプの軌跡が残り、車体の傾きやタイヤの接地、衝突のタイミングによって、速度だけでなく重量までしっかりと感じられるように描かれています。派手に動かすだけではなく、停止や間を挟むことで次の加速がさらに強くカッコよく見える設計になっています。
金田と鉄雄の関係も物語の核になっています。いつも仲間を引っ張る金田と、彼に守られることへ劣等感を抱く鉄雄。巨大な力は鉄雄を自由にするようでありながら、内側にあった怒りや不安まで増幅してしまいます。
人間の身体、機械、都市が崩れ、別の形へ変化していく映像は、美しさと生理的な恐怖を同時に含んでいます。すべてを理屈で理解するより、まずネオ東京の密度と音の圧力を受け止めてください。
アニメーションで都市と破壊をどこまで描けるのか。その答えを、初見の衝撃とともに体験したい作品です。
(C)1988マッシュルーム/アキラ製作委員会
『イノセンス』——人形と人間、その境界に残る「心」を見つめる

2004年製作・2004年3月劇場公開/監督・脚本:押井守/出演:大塚明夫、田中敦子、山寺宏一 ほか
人間、サイボーグ、ロボットが共存する2032年。公安9課のバトーとトグサは、人間を殺害したのち自壊する愛玩用ガイノイドをめぐる事件を捜査します。高度に機械化された社会で、二人は人形を作る企業と、その背後にある真相へ近づいていきます。
『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』の続編ですが、この作品の中心にいるのはバトーです。強靭な義体を持つ彼が、草薙素子の不在を抱えながら事件を追う姿には、機械の身体と人間的な寂しさが同居しています。愛犬へ向ける穏やかな動作があることで、無機質な捜査場面にも温かさが生まれます。
特に印象的なのが、都市と祭礼の美術です。漢字の看板、仏像、人形、巨大な建造物、無数の光が重なり、現実の都市というより記憶や夢が建築物になったような空間が作りだされています。華やかな祭りの場面では、3DCGと手描きの人物が入り交じり、美しさの中に不気味な不安が忍び込みます。
ガイノイドの動きは人間に近い一方、関節の回転や停止のタイミングにわずかな異質さがあり、人間らしく見えるからこそ、同じ動作の反復や表情の静止が恐ろしく感じられます。鏡、ガラス、監視映像など、像を映すものが繰り返され、「本物」と「複製」の境界を視覚的に揺らし混乱させられます。
引用を多く含む会話は、一度ですべてを理解しにくいです。それでも、川井憲次の音楽、都市の光、バトーとトグサの距離感を追えば、作品の感情は受け取れるはずです。前作を先に観ると人物関係はより深く伝わりますが、『イノセンス』独自の美術と演出だけでも強烈な映画体験になります。
人と同じ姿を持つ人形に心はあるのか。そして、人間が人間であることを支えるものは何なのか。映像の豪華さと静かな孤独が同居する、初見で世界へ飲み込まれたい作品です。
(C)2004 士郎正宗/講談社・IG, ITNDDTD
『パプリカ』——夢だからこそ、場面はどこへでもつながっていく

2006年製作・2006年11月劇場公開/監督:今敏/脚本:水上清資、今敏/出演:林原めぐみ、江守徹、古谷徹 ほか
他人の夢へ入り、心の治療を行う装置「DCミニ」が盗まれます。悪用されれば、他人の無意識へ侵入し、人格を破壊することも可能です。研究者の千葉敦子は、夢の中で活動する別の人格「パプリカ」として、事件の原因を追います。
夢の中では、一つのイメージが次の場面への扉になります。廊下を走っていた人物が扉を開けると別の場所へ出て、身体が物へ変わり、画面の中へ入ったと思えば、立場が反転します。この作品は、その夢特有の連想を編集そのものにしています。
現実の場面転換では、場所や時間の連続性が求められますが、夢の世界では、形、色、動作、感情が似ているだけで次の映像へ飛べます。今敏監督はその性質を利用し、カットが変わる瞬間に観客の理解を何度も更新します。
繰り返し現れる奇妙なパレードは、にぎやかで楽しいように見えながら、無関係な物が際限なく増殖する恐怖を持っています。画面の隅々まで情報が動き、見ている側の視線も落ち着く場所を失います。
一方、冷静で規律を重んじる敦子と、自由に動き回るパプリカの対比は、一人の人間が持つ複数の顔を表しています。夢と現実だけでなく、理性と衝動、自分と他者の境界まで揺らいでいきます。
筋道をすべて整理しようとするより、映像の連鎖へ身を委ね運ばれてください。アニメーションだから成立する変身と場面転換が、次々に押し寄せるカオスな作品です。
(C) 2006 MADHOUSE/Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc.
『PERFECT BLUE』——自分が見ている現実を、信じられなくなる

1998年製作・1998年2月劇場公開/監督:今敏/脚本:村井さだゆき/出演:岩男潤子、松本梨香、辻親八 ほか
アイドルグループを卒業し、俳優へ転身した霧越未麻。新しい仕事で求められる役柄と、それまでファンへ見せてきた自分との違いに戸惑うなか、彼女の身辺では不穏な出来事が起こり始めます。
この作品が作り出す恐怖は、撮影中の演技、未麻の日常、記憶、想像が、わずかなきっかけで切り替わり、場面を理解したと思った直後、それが別の状況だったと気づかされることにより起こります。
似た構図や動作をつないだ編集によって、時間と場所の境界が消えていきます。ベッドから起き上がる、電車へ乗る、撮影現場で台詞を言う。同じ行為が反復されるたび、どこまでが現実なのか判断しにくくなります。
未麻は、周囲が望む「アイドルの未麻」と「女優の未麻」の間で揺れます。自分自身の姿も、鏡、画面、写真、他人の言葉を通して見せられるため、本人の輪郭が次第に不確かになります。現代のSNSにも通じる、他人から見られる自分と本来の自分のずれが鋭く描かれています。
華やかな業界の裏側を扱いながら、映像の美しさで出来事を軽く見せない点も重要です。作品には殺人、ストーカー行為、性的搾取を思わせる場面、性暴力を演じる撮影場面など、強い描写が含まれます。苦手な人は注意してください。
決して気軽な作品ではありませんが、それでも、編集と視点だけで観客の認識をここまで揺さぶれるのかという驚きは強烈です。心理サスペンスと映像演出の力を体験したい人におすすめの作品です。
(C)1997MADHOUSE
3.動きそのものが快感になる——アニメーションの可能性を広げた神映画
『REDLINE』——速度を描くために、世界の形まで変えてしまう

2010年製作・2010年10月劇場公開/監督:小池健/脚本:石井克人、榎戸洋司、櫻井圭記/出演:木村拓哉、蒼井優、浅野忠信 ほか
宇宙最速のレーサーを決める、五年に一度の祭典「REDLINE」。リーゼントが特徴のレーサー・JPは、愛車と自らの運転技術だけで、武器の使用さえ許される危険なレースへ挑みます。
この作品を観て最初に感じるのは、絵が動いているというより、画面全体が前方へ進んでいるような勢いです。車体は加速に合わせて長く伸び、タイヤは潰れ、人物の顔まで圧力で変形します。現実の形を守るのではなく、速度を伝えるために形そのものを変えているのです。
黒く太い輪郭、強烈な色彩、極端なパースによって、一枚の絵だけでも進行方向と力が分かります。そこへエンジン音と音楽が重なり、観客は細かな理屈を理解することなんてどうでもよくなりレースの熱へと巻き込まれていきます。
JPの動きには、格好よさだけでなく人間らしい不器用さがあります。見た目は派手でも、恋や友情には一直線で、どこか古風です。蒼井優が演じるソノシーにも、自分の夢を自分でつかもうとする意志があり、二人は単純に助ける側と助けられる側という構図で描かれるわけではなく、お互いにライバルであり仲間の様な関係へと進んでいきます。
背景まで手描きで作成された画面には、作り手の執念がそのまま刻まれています。物語を静かに味わうというより、線、色、音、タイミングを全身で浴びる映画です。
アニメーションは現実の動きを再現するだけではなく、感覚を伝えるために現実を変形できる。その面白さを、最も純粋な形で見せてくれる一本です。ぜひ爆音でみてください。
(C)2010 石井克人・GASTONIA・マッドハウス/REDLINE委員会
『サマーウォーズ』——大家族の日常と仮想世界の危機が、一つにつながる

2010年製作・2010年10月劇場公開/監督:小池健/脚本:石井克人、榎戸洋司、櫻井圭記/出演:木村拓哉、蒼井優、浅野忠信 ほか
宇宙最速のレーサーを決める、五年に一度の祭典「REDLINE」。リーゼントが特徴のレーサー・JPは、愛車と自らの運転技術だけで、武器の使用さえ許される危険なレースへ挑みます。
この作品を観て最初に感じるのは、絵が動いているというより、画面全体が前方へ進んでいるような勢いです。車体は加速に合わせて長く伸び、タイヤは潰れ、人物の顔まで圧力で変形します。現実の形を守るのではなく、速度を伝えるために形そのものを変えているのです。
黒く太い輪郭、強烈な色彩、極端なパースによって、一枚の絵だけでも進行方向と力が分かります。そこへエンジン音と音楽が重なり、観客は細かな理屈を理解することなんてどうでもよくなりレースの熱へと巻き込まれていきます。
JPの動きには、格好よさだけでなく人間らしい不器用さがあります。見た目は派手でも、恋や友情には一直線で、どこか古風です。蒼井優が演じるソノシーにも、自分の夢を自分でつかもうとする意志があり、二人は単純に助ける側と助けられる側という構図で描かれるわけではなく、お互いにライバルであり仲間の様な関係へと進んでいきます。
背景まで手描きで作成された画面には、作り手の執念がそのまま刻まれています。物語を静かに味わうというより、線、色、音、タイミングを全身で浴びる映画です。
アニメーションは現実の動きを再現するだけではなく、感覚を伝えるために現実を変形できる。その面白さを、最も純粋な形で見せてくれる一本です。ぜひ爆音でみてください。
(C)2009 SUMMERWARS FILM PARTNERS
『スパイダーマン:スパイダーバース』——コミックの線が動き出し、一人の少年をヒーローにする

2018年製作・2019年3月劇場公開/監督:ボブ・ペルシケッティ、ピーター・ラムジー、ロドニー・ロスマン/脚本:フィル・ロード、ロドニー・ロスマン/出演:シャメイク・ムーア、ジェイク・ジョンソン、ヘイリー・スタインフェルド ほか
宇宙最速のレーサーを決める、五年に一度の祭典「REDLINE」。リーゼントが特徴のレーサー・JPは、愛車と自らの運転技術だけで、武器の使用さえ許される危険なレースへ挑みます。
この作品を観て最初に感じるのは、絵が動いているというより、画面全体が前方へ進んでいるような勢いです。車体は加速に合わせて長く伸び、タイヤは潰れ、人物の顔まで圧力で変形します。現実の形を守るのではなく、速度を伝えるために形そのものを変えているのです。
黒く太い輪郭、強烈な色彩、極端なパースによって、一枚の絵だけでも進行方向と力が分かります。そこへエンジン音と音楽が重なり、観客は細かな理屈を理解することなんてどうでもよくなりレースの熱へと巻き込まれていきます。
JPの動きには、格好よさだけでなく人間らしい不器用さがあります。見た目は派手でも、恋や友情には一直線で、どこか古風です。蒼井優が演じるソノシーにも、自分の夢を自分でつかもうとする意志があり、二人は単純に助ける側と助けられる側という構図で描かれるわけではなく、お互いにライバルであり仲間の様な関係へと進んでいきます。
背景まで手描きで作成された画面には、作り手の執念がそのまま刻まれています。物語を静かに味わうというより、線、色、音、タイミングを全身で浴びる映画です。
アニメーションは現実の動きを再現するだけではなく、感覚を伝えるために現実を変形できる。その面白さを、最も純粋な形で見せてくれる一本です。ぜひ爆音でみてください。
