映画『トラぺジウム』レビュー
作品情報
アイドルグループ「乃木坂46」の1期生として活躍した高山一実が、現役アイドル時代の2016年に雑誌「ダ・ヴィンチ」で連載した長編小説「トラペジウム」をアニメーション映画化。
キャスト
- 東ゆう / 結川あさき
- 大河くるみ / 羊宮姫那
- 華鳥蘭子 / 上田麗奈
- 亀井美嘉 / 相川遥花
- 工藤真司 / 木全翔也
スタッフ
- 原作 / 高山一実
- 監督 / 篠原正寛
- 脚本 / 柿原優子
- キャラクターデザイン / りお
- 制作 / CloverWorks
あらすじ
乃木坂46 1期生・高山一実は、2016年から雑誌『ダ・ヴィンチ』で長編小説の執筆に挑戦した。
小説のタイトルは『トラペジウム』。
現役アイドルとして生きる日々の中で高山が書き綴ったのは、「アイドルを目指す少女の青春物語」だった。原作者自身の経験や葛藤が込められた小説は瑞々しくもリアリティーと熱量に満ちた文章で反響を呼び
2018年発売の単行本は累計30万部の大ヒットを達成した。そしてついに、アニメーション映画化企画が始動。
長期に渡る映画制作の中で、高山は脚本や音楽など幅広く携わり、
『ぼっち・ざ・ろっく!』『SPY×FAMILY』など数々の人気作品を手掛けるスタジオCloverWorksと
制作スタッフ・クリエイターの協力のもと、映画作品として『トラペジウム』を新たに再構築した。15歳の主人公・東ゆうを演じるのは、新進気鋭の声優・結川あさき。
ゆうが結成するアイドルグループ「東西南北」のメンバーのキャストは、
西=大河くるみを羊宮妃那、南=華鳥蘭子を上田麗奈、北=亀井美嘉を相川遥花。
さらに、ゆうの“計画の協力者”工藤真司を木全翔也(JO1)、
ゆうが出会うボランティア団体のお爺さん・伊丹秀一を内村光良が務める。主題歌は、現在の音楽シーンを牽引する音楽プロジェクト・MAISONdesが担い、
ボーカルには、バーチャルアイドルグループ「ホロライブ」の0期生であり圧倒的な歌声で
国内外で絶大な支持を得るVtuber・星街すいせいを迎え、夢に焦がれて生きる少女の想いを歌い届ける。「はじめてアイドルを見たとき思ったの。人間って光るんだって。」
夢に取り憑かれた少女・東ゆう。
公式サイトより引用 https://trapezium-movie.com/#staffcast
アイドルになるための計画を進める中で、ゆうは様々な困難にめぐり逢う。
そして東西南北の“輝く星たち”を仲間にしたゆうが、高校生活をかけて追いかけた夢の結末とは――
感想
輝きと不協和音のアンバランスが途中でやめられない
アイドルを夢見る少女、「東ゆう」はアイドルになるために戦略を練り計画をたて、そして着々と実行していく。学生である彼女が勉学と両立しつつがむしゃらに邁進していく姿は、本当に輝いて見えたし、歳をとってがむしゃらに行動することに躊躇してしまうようになった私からすると、少しうらやましくも感じました。
アイドルの夢を実現するために半島地域「城州」の東西南北から1人づつ可愛い女子を探し、南から1人、西から1人と仲間が増えていく様子はまるで、RPGゲームで仲間が増えていくのを見ているようで胸が高鳴りますが、視聴者は主人公の思惑があって仲良くなっていっているのが分かるため、うまく行っているのが分かりつつも一抹の不安を抱えながら物語を進んでいくことになり、わくわくとドキドキが入り混じった感情のまま見続けるのは苦しくも楽しいため、先がきになりのめりこんでしまいます。
物主人公が自分の夢へ向ってストイックに挑戦していくなかでメンバーに対して配慮のない行動や言動を取り、夢に真剣だからこそそういった行動を取ってしまっているのはすごく理解できますが、私もトガッていた時に同じようなことをしてしまっていた経験があるため、傍から見るとここまで嫌なヤツに見えてしまっていたのかと反省してしまう気持ちと、この子がいつか関係が崩れてしまい大変なことになるんじゃないかと心配で心配でドキドキしてしまいました。。
少し嫌なヤツに見えてしまう主人公ですが、自分の夢に対して真剣に向き合っているのが伝わってくるので、決して嫌いにはなれず「うまく行っているときほど慎重に!」と主人公を応援してしまうほど感情移入させられました。
友情がそこにはあった
劇中の中盤から4人の生活の変化に伴い関係性が徐々に変わっていき、「東ゆう」は他の3人のメンバー達とはどこか噛み合わず、他メンバーの人気に劣等感を抱くが落ち込む暇もなく毎日が通り過ぎていく。
「東ゆう」のアイドルに対する執念とメンバーの意識が徐々に隔たりが生まれ雰囲気も少しギスギスするも、華鳥蘭子の持ち前のポジティブさで表面上は和やかになるけれど水面下ではなにかが崩れ始めている音が聞こえているようで、いつこの関係性が崩れてしまうのか気が気でない状態で物語が進んでいきます。アイドルとしての日々が過ぎていくごとに主人公以外のメンバーの表情が暗く変っていき、周囲の雰囲気も輝きがすくなっていったように思います。笑顔がなくなっていく様子に気が付いたときにはホラー映画にも似た怖いものを感じるほど、人間関係が冷え切っていく様子がしっかり描かれていたと思います。
関係が崩壊し、アイドルグループが解散になり、事務所も対処することになります。そんな時に母に「自分は嫌な人間か」と聞いたときに答えた「そういうとこもあるし、そうじゃないとこもある」という母のセリフはなんだか心に響いた感じがしました。まさに主人公の自分の夢に向かって努力する姿は輝いて見えるが、手段を択ばない様子はどちらかというと嫌な奴に見えてしまう。そんなことは誰にでもありえることで、おそらく私も夢をかなえるために努力し、失敗しないように不安要素を排除し導けるようにしていたことも、ともに成功をつかんだ人にとっては良くても、排除された側の人間にはきっと嫌な奴として映っていたんだろうと感じました。それでも私は夢を追って努力する人を応援したいと思った。
最後に
アイドル物とはじめ聞いたときには少し抵抗がありましたが、実際見てみると努力や友情、そして涙ありの輝かしい青春ストーリーで胸が熱くなりました。偏見で見る作品を絞ってしまうことが良くありますが、今回は好き嫌いをせずに挑戦してみて良かったと感じます。今後もえり好みせずに様々な作品を見ていこうと思います。