映画『ある男』レビュー
作品情報
『日蝕』で芥川賞を受賞した作家の平野啓一郎による、人間存在の根源を描き読売部kk楽章を受賞した小説『ある男』が、石川慶監督により映画化。
弁護士・城戸を妻夫木聡、
キャスト
- 城戸章良 / 妻夫木聡
- 谷口里枝 / 安藤サクラ
- 谷口大祐(X/ある男)/ 窪田正孝
- 後藤美涼 / 清野菜名
- 谷口恭一 / 眞島秀和
- 中北 / 小藪賀千豊
スタッフ
- 監督・編集 / 石川 慶
- 脚本 / 向井康介
- 撮影 / 行動龍人
- 原作 / 平野啓一郎
『日蝕』により第120回芥川賞を受賞。
あらすじ
愛したはずの夫は、全くの別人でした―
弁護士の城戸は、依頼者の里枝~、亡くなった夫「大祐」の身元調査という奇妙な相談を受ける。里枝は離婚を経て、子供を連れて故郷にもどり、やがて出会う「大祐」と再婚。新たに生まれた子供と4人で幸せな家庭を築いていたが、ある日彼が不慮の事故で命を落としてしまう。悲しみに暮れる中、長年疎遠になっていた大祐の兄・恭一が法要に訪れ、遺影を見ると「これ、大祐じゃないです」と衝撃の事実を告げる。
愛したはずの夫は、名前もわからない全くの別人だったのだ・・・。
「ある男」の正体を負い”真実”に近づくにつれて、いつしか城戸の心に別人として生きた男への複雑な思いが生まれていく―。なぜその男は別人として生きたのか。
公式サイトより引用 https://movies.shochiku.co.jp/a-man/
弁護士・城戸がその真実に辿り着いたとき、必ず涙する―
感想
真相が気になりのめり込んでしまう
里枝(安藤サクラ)の亡くなった夫「大祐」が自分の知っていた人物とは全くの別人であった事が発覚し、過去に離婚調停で面識がある弁護士の城戸(妻夫木聡)に「夫は本当は誰なのか」身元の調査を行うという奇妙な相談を受けます。
捜索開始当初は、亡くなった夫に繋がる手がかりは全くと言っていいほど手がかりが見つかりませんでしたが、とある絵画展で「大祐」が生前に描いていた絵と似た絵を見つけたことをきっかけに話が急激に進んでいきます。
里枝(安藤サクラ)の亡くなった夫がいったい誰なのか、その真相に近づくに連れて変化していく城戸(妻夫木聡)の心情は共感できる部分がありつつも、繊細に描き出された現代日本の暗い部分に触れることで、城戸(妻夫木聡)だけでなく見ている私達も胸がきしむような得も言われぬ気持ちになります。
真実を知るにつれてより登場人物に感情移入してしまい、亡くなった夫はなぜ、身元を変えなければならなかったのか、城戸(妻夫木聡)自身もどうなってしまうのかが気になりのめり込んでしまいます。
アイデンティティとは
世界から見た日本は海外の人に優しい国で、うまく言葉を話せなくてもバカにされたりすることが少ないことから、海外の人も移住や留学がしやすいと本で読んだことがあります。しかし、この作品では様々な差別や偏見に触れることになります。
ふと、今暮らしている環境をかえりみてみると、コンビニの店員には海外の人が多いけど会社の中にはあまりいないこと、中国の日本に対して都合の悪いニュースが良いニュースより多いきがすることなど、今までは気に留めることもない些細だと思っていたことが、もしかしたら差別なのかもしれないと気づかせてくれる良い映画だと思いました。
最後に
日常として思えていたことが、誰かを傷つけてしまっているかもしれないのだなと考えさせられる映画でした。私も社会に出て暫くになりますが、こういう感じの人はこうだと形にはめて決めつけて、思考を停止してしまっていることがあるなと感じました。
また、映画を通して自分が住んでいる日本についても知らないことが多いとも感じました。自国を知り、世界を知ることで考えを改めていこうと思います。