『ハイキュー!! 烏野高校 VS 白鳥沢学園高校』――1クール1試合の極限バトルが生んだ、月島蛍という“MVP”の覚醒
作品情報
今シーズンでは絶対王者・牛島若利率いる白鳥沢学園に、古豪・烏野高校が挑む全5セットの激闘を描いています。
最大の魅力は、圧倒的な「個」の力に対し、烏野が培ってきた「多角的な攻撃」と「執念」で対抗する構図にあります。特に、冷静な戦略家である月島蛍が、牛島のスパイクをドシャットし、バレーに「ハマる」瞬間は、鳥肌が立つほど鮮烈です。一球一球の重みが極限まで高まる中で、一瞬の隙も許されない緊迫した攻防が、観る者の呼吸を忘れさせるほどの熱量で描き切られています。
あらすじ
春の高校バレー宮城県大会・決勝戦。烏野高校排球部の前に立ちはだかるのは、絶対王者と呼ばれる白鳥沢学園高校。最強のスパイカー・牛島を前に、果たして勝機はあるのか!?全国大会出場へ向けた激闘がいま始まる――。
下を向くんじゃねえ、バレーは常に上を向くスポーツだ
たった1試合に、全10話を費やす。 そんな贅沢で、無謀とも言える構成に挑んだアニメがありました。 それが『ハイキュー!! 烏野高校 VS 白鳥沢学園高校』(第3期)です。
絶対王者・白鳥沢学園と、挑戦者・烏野高校の春高予選決勝。 個の力でねじ伏せる王者に対し、組織力と奇策で挑むカラスたち。 互いの哲学とプライドがぶつかり合うこの試合は、スポーツアニメ史に残る名勝負であると同時に、ある一人の少年がバレーボールに「ハマる」瞬間を目撃するドキュメンタリーでもありました。
今回は、シリーズ最高傑作との呼び声も高いこの白鳥沢戦について、ベテランコラムニストの視点から、その熱狂の理由と、月島蛍(ツッキー)の覚醒を中心に紐解いていきます。 あの時、テレビの前で拳を握りしめた全てのバレーボールファンへ。
1クール1試合の濃密さ――コンセプトの戦い
この第3期の特徴は、なんといっても「対白鳥沢戦のみを描く」という潔さにあります。 序盤こそ人物解説や状況説明でスローペースに感じるかもしれませんが、試合が進むにつれて加速していく緊張感は圧巻の一言。 観客席の応援団の声援、コートに響くシューズの摩擦音、そして選手たちの息遣い。 まるで自分も会場にいるかのような臨場感で、5セットマッチの死闘を追体験させられます。
この戦いは、単なる強豪校対決ではありません。 「個の力」を絶対視する白鳥沢の鷲匠監督と、「数と連携」で戦う烏野の烏養コーチ。 異なるバレーボール観(コンセプト)の代理戦争でもあります。 高さとパワーで圧倒する牛島若利(ウシワカ)に対し、烏野はシンクロ攻撃や変人速攻など、持てる武器の全てを使って食らいつく。 「不完全で野蛮」なカラスたちが、完成された白鳥にどう挑むのか。その構図が明確だからこそ、一つ一つのプレーに意味とドラマが生まれるのです。
月島蛍の覚醒――「たかが部活」を超えた瞬間
そして、この白鳥沢戦を語る上で絶対に外せないのが、月島蛍の存在です。 これまで「たかが部活」と冷めた態度をとっていた彼が、この試合でついに覚醒します。
第2期での合宿、山口との衝突、そして兄との和解。 積み重ねてきた全ての伏線が、牛島のスパイクをドシャットしたあの瞬間に結実します。 「ワンタッチ」と叫び、執拗にプレッシャーをかけ続け、ついに訪れた綻び。 「ほんの僅か、苛立ちと焦りを含んだ綻びを、まってたよ」 あの鋭い眼光と、静かだが力強いガッツポーズ。このシーンで鳥肌が立たなかった視聴者はいないでしょう。
烏養コーチが「この試合のMVP」と評した通り、彼の冷静なリードブロックと精神的支柱としての働きがなければ、烏野の勝利はあり得ませんでした。 怪我でコートを離れる時の悔しそうな表情、そして試合後の山口とのやり取り。 「かっこ悪い」と自嘲する月島に対し、「かっこ悪いわけないじゃん!馬鹿なの!」と返す山口。 お互いがお互いを認め合い、高め合う関係性が、最高にエモい。 まさに、月島蛍が本当の意味でバレーボールにハマった瞬間でした。
「下を向くんじゃねえ!」――名将・烏養繋心と、受け継がれる魂
本作を語る上で避けて通れないのが、烏養繋心コーチ役・田中一成さんの急逝と、江川央生さんへのキャスト変更です。 第8話までの田中さんの演技は、選手たちを鼓舞する若き指導者そのものでした。 そして、ラストシーンで選手たちに向けられた檄。 「下を向くんじゃねえ! バレーは常に上を向くスポーツだ!」 このセリフは、江川さんが担当されましたが、そこには田中さんの魂も確かに宿っていました。 メタ的な視点になってしまいますが、この言葉は烏野メンバーだけでなく、私たち視聴者、そして制作陣へのエールのように響きます。
また、敵役である白鳥沢のメンバーも魅力的でした。 絶対的エース・牛島若利の圧倒的な強さと、その裏にある父親とのエピソード。 「ゲス・モンスター」こと天童覚のトリッキーなプレーと、彼なりのバレー観。 彼らもまた、ただの悪役ではなく、バレーボールに人生を懸けるアスリートとして描かれています。 だからこそ、最後の決着がついた瞬間、勝者の歓喜だけでなく、敗者の悔しさにも深く感情移入してしまうのです。
まとめ:バレーボールは、こんなにも面白い
『ハイキュー!! 烏野高校 VS 白鳥沢学園高校』は、スポーツアニメの一つの到達点と言える作品です。
派手な必殺技はない。魔法も超能力もない。 あるのは、ボールを繋ぎ、ネットの向こうに落とすというシンプルなルールと、それに青春を捧げる少年たちの汗と涙だけ。 しかし、だからこそ面白い。だからこそ熱い。
10話かけて描かれた激闘の果てに、日向と影山が見せた変人速攻。 そして、カラスたちが掴み取った全国への切符。 この感動は、何年経っても色褪せることはないでしょう。
まだ見ていない方は、ぜひ第1期から通してご覧ください。 そして、既に見た方も、もう一度あの熱狂のコートへ。 そこには、何度見ても心を震わせる「頂の景色」が待っています。
スタッフ・キャスト
キャスト
- 日向 翔陽 : Voiced by 村瀬歩
- 影山 飛雄 : Voiced by 石川界人
- 澤村 大地 : Voiced by 日野聡
- 菅原 孝支 : Voiced by 入野自由
- 東峰 旭 : Voiced by 細谷佳正
- 西谷 夕 : Voiced by 岡本信彦
- 田中 龍之介 : Voiced by 林勇
- 月島 蛍 : Voiced by 内山昂輝
- 山口 忠 : Voiced by 斉藤壮馬
- 牛島 若利 : Voiced by 竹内良太
- 大平 獅音 : Voiced by 丹沢晃之
- 天童 覚 : Voiced by 木村昴
- 清水 潔子 : Voiced by 名塚佳織
- 及川 徹 : Voiced by 浪川大輔
スタッフ
©古舘春一/集英社・「ハイキュー!!セカンドシーズン」製作委員会・MBS
