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アニメ

『よふかしのうた』真夜中の魔法・吸血鬼と哲学少年が織りなす不思議なラブストーリー

よふかしのうた
tarumaki

作品情報

『よふかしのうた』は、コトヤマさんによる漫画が原作で、2022年にアニメ化された作品です。

不眠症で夜な夜な街を徘徊する中学生、夜守コウは、ある夜、自由奔放な吸血鬼の少女、七草ナズナと出会います。彼女に吸血鬼の楽しさを教えてもらったコウは、「僕も吸血鬼になりたい!」と願い、ナズナに恋をしようと決意します。

ナズナに血を吸われると吸血鬼になれるのですが、そこに「相手に恋をすること」という条件が加わり…。二人の特別な夜の物語が、スタイリッシュな映像と音楽で描かれています!

あらすじ

“夜はまだ終わらない”

吸血鬼になることへの戸惑いを乗り越え、
ナズナを“好き”になることを決めたコウと、コウに“惚れさせる”決意をしたナズナ。
「恋」が一体なんなのか、わからないまま二人の夜は加速していく。

吸血鬼を殺そうと企む探偵・鶯 餡子の手が、すぐそこまで迫る。
吸血鬼の弱点は「人間時代に思い入れの強かったもの」。
その弱点を予め処分しようとするが、ナズナには人間時代の記憶が一切ない。
ナズナの隠された過去とは?なぜ餡子は吸血鬼を殺すようになったのか?

そして、ナズナと餡子に交錯する“秘密”とは――?

コウ、ナズナ、餡子……
楽しい「よふかし」では終わらない、新たな“夜”がはじまる!

魅力を紹介!

夜更かしに罪悪感を感じるのは、きっと誰もが子どもの頃から刷り込まれてきた「社会規範」ゆえなのかもしれません。学校に行くべき、朝起きるべき、夜は眠るべき。そんな“べき”に囚われる日常から一歩踏み出し、静まり返った深夜の街でしか出会えない風景や感情が、本作『よふかしのうた』にはぎゅっと詰まっています。

本作の主人公は、不登校の中学2年生・夜守コウ。眠れぬ夜にふらりと飛び出した街で、彼は一人の吸血鬼・七草ナズナと出会います。彼女の存在は、退屈で無味乾燥だったコウの世界を一変させ、夜の魅力と危うさを存分に見せつけてくれます。

今回は、そんな不思議で美しい“夜の物語”を3つの視点からご紹介したいと思います。

夜の街の幻想美 吸血鬼たちが舞うパープルの世界

まず何より目を奪われるのは、幻想的に描かれた夜の世界です。パープルを基調とした色彩に包まれた街並みは、どこか現実離れしていて、それでいて妙にリアル。ネオンの瞬きや、静けさの中に響く足音、星がきらめく夜空——そのひとつひとつが丁寧に描写されており、画面を眺めているだけで“夜更かし”の快感が感じられるほどです。

そんな夜の街で出会うのが、吸血鬼の七草ナズナ。彼女は露出度の高い大胆な服装に反して、恋愛の話題には赤面してしまうポンコツ系ヒロイン。見た目のインパクトと中身のギャップがとても魅力的で、恋人未満のふたりが見せるちょっとずれたやり取りには、クスッと笑わされます。

ナズナの他にも、作品中盤からはさまざまなタイプの吸血鬼たちが登場します。ギャル風からお姉さん系、果ては謎多き知略型まで。彼女たちの存在が物語にテンポとスリルを与え、作品世界にさらに深みをもたらしています。夜が進むにつれて、街がどんどん活気づいていくように、物語も後半にかけてどんどんスピード感を増していきます。

哲学少年コウの“好き”を探す旅

夜守コウは、ただの不登校少年ではありません。彼は“好き”とは何か、“恋”とはどういうものかを深く考える、ちょっと哲学的な少年です。女の子からの告白にも「好きってどういうことか分からないから」と断ってしまうほど、感情に対して慎重で、ある意味では誠実とも言えます。

彼が“吸血鬼になりたい”と願うのも、単なる現実逃避ではなく、夜という時間帯にしか存在できないナズナの世界に、本気で飛び込もうとしているから。そんなコウの姿は、行動こそ突飛でも、心の中では一生懸命「自分の場所」を探しているように見えて、共感を呼びます。

「退屈なんてさせない」——ラスト近く、彼がナズナに告げるこの言葉には、ただのラブストーリー以上の重みがあります。日常というループに疲れ、同じ時間を繰り返してきた吸血鬼ナズナにとって、それはきっと希望の言葉だったに違いありません。

夜にしか見えない心の風景 “よふかし”が教えてくれるもの

この物語は、どこか世の中に疲れちゃった人たちのための“癒し”でもあります。真夜中という非日常の時間帯は、罪悪感や背徳感と引き換えに、静けさや自由、そして心のゆとりを与えてくれる場所です。誰にも邪魔されない空間で、自分のペースで物事を考えることができる。『よふかしのうた』は、そんな時間の大切さを教えてくれる作品です。

たとえば、ナズナのような吸血鬼は血を食糧とする存在で、人間とはそもそもの価値観が違います。好きという感情すら、我々の知っている“好き”とは別物かもしれません。そんな彼女と、どこか愛に飢えて育ったであろうコウが惹かれ合うことで生まれる関係は、きっと「恋」とか「愛」といった言葉だけでは言い表せない、何か特別なものです。

そして、周囲からどう見られるか、世間の“べき論”にとらわれて生きる私たちにとって、コウの生き方はひとつのアンチテーゼでもあります。学校に行かない。夜に出歩く。そんな“普通”から外れた行為が、本当に悪いことなのか? 本作は、その問いを優しく、しかししっかりと投げかけてくれます。

まとめ:夜にしか出会えないものが、ここにある

『よふかしのうた』は、ラブコメでもあり、青春ドラマでもあり、そしてなにより哲学的なメッセージを孕んだ“夜の物語”です。パープルに染まる幻想的な夜の街で、吸血鬼と人間が交わす言葉と感情には、思春期の不安定さと静けさ、そして少しの勇気が宿っています。

ナズナとコウ、ふたりの関係は決して甘くはありません。でも、その不器用さと距離感こそがリアルで、どこか懐かしく、心を動かされます。そして、そんなふたりが繰り広げる夜の冒険には、大人になった今だからこそ感じる“夜更かしの魅力”が詰まっているのです。

もし、あなたが今、日常に少し疲れているなら。眠れない夜にふと時計を見たら深夜2時だったなら。この作品を思い出してみてください。『よふかしのうた』は、そんな夜にこそ観てほしい、ちょっと背徳で、だけどとびきり優しい物語です。


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ゲーム制作会社で働いてます。
最新作から過去作まで好きな作品を紹介して、少しでも業界の応援になればと思いつつに書いていこうと思います。 基本的に批判的な意見は書かないようにしています。
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