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笑って泣ける、ちょっと変な青春譚―『変態王子と笑わない猫。』が描く願いと記憶の物語

変態王子と笑わない猫。
tarumaki

作品情報

『変態王子と笑わない猫。』は、さがら総さん原作のライトノベルが元になったアニメです。主人公は、表向きは真面目なフリをしているけど、実はちょっぴりスケベな高校生、横寺陽人(よこでらようと)。ある日、彼の頭の中の煩悩がダダ漏れになってしまうという、とんでもない悩みを抱えることになります。

陽人と月子は、お互いの悩みを解決するために協力していくうちに、奇妙な関係を築いていきます。周りの個性的な友達も巻き込みながら、色々な騒動が起こったり、ちょっと切ない出来事があったりする、青春ラブコメディです。タイトルのインパクトとは裏腹に、意外と繊細な心の動きとか、もどかしいけど甘酸っぱい恋愛模様が描かれているのが魅力です!

あらすじ

「一先輩は、 どうしようもない変態さんです」

横寺陽人は頭の中身が煩悩まみれな高校二年生。 ひょんなことで“笑わない猫像”に祈ったら、心に思ったことがいつでもどこでも垂れ流しになってしまった!

そんな人生の大ピンチを救ってくれたのは、クールでキュートな無表情娘、筒隠月子
「頭の先から尻尾の終わりまで撫でまわしたくなる感じの子だなあ」
「変態さんですね」
「ち、違っ、褒め言葉の一種だよ!?」 「裁判沙汰の多そうな変態さんですね」
「!!??」

とにもかくにも猫像のせいで失われた本音と建前を取り戻す、 爽やか変態×冷ややか少女の青春迷走ストーリーがいまはじまる!

ただのラブコメ?いえいえ、それだけじゃないんです。

ライトノベル原作のアニメというと、どこか似たような展開やキャラクターが多くて、正直飽き飽きしている…という方もいるかもしれません。筆者もそのひとりでした。そんな私がタイトルを見て「絶対ふざけたラブコメだな」と思いながらも、なぜか気になって見始めたのが『変態王子と笑わない猫。』。これがもう、見事にやられました。

変態な主人公に無表情なヒロイン。キャラ設定だけを聞けば「ありがち」のひとことかもしれません。けれどその裏には、切なさや優しさが詰まった奥深いドラマが潜んでいました。笑って、ドキドキして、気づけば涙している。そんな不思議な魅力に満ちた本作について、今回は三つの視点から語っていきたいと思います。

キャラが光る!「変態×無表情」なのに癒される理由

『変態王子と笑わない猫。』の最大の魅力、それはキャラクターの個性と掛け合いの絶妙さにあります。

主人公・**横寺陽人(よこでら ようと)**は、誰もが目をそむけるような“本音”を隠すことなく発言してしまう、清々しいほどの変態キャラ。しかし、それはただのギャグ要素ではありません。むしろ、彼の“変態さ”は物語の軸でもあり、彼自身の優しさや不器用な一途さの表れでもあります。

一方、ヒロインの**筒隠月子(つつかくし つきこ)**は、表情を失ってしまった少女。彼女の無表情な姿からは感情が読み取れませんが、陽人とのやりとりの中で見せる小さな変化や仕草がとにかく可愛いんです。ツンとした態度の中に、ふと覗くデレや寂しさがたまらなく愛おしい。

そしてもうひとりのヒロイン、**小豆梓(あずき あずさ)**も忘れてはいけません。気が強くて意地っ張り、でも実はとっても繊細。時に陽人にデレる姿が視聴者の心をくすぐります。

さらに、サブキャラの鋼鉄さんの破壊力も強烈。常識をぶっ壊すようなボケで笑いを取りつつ、物語のテンポを軽快にしてくれます。

願いが運命を変える?『笑わない猫像』のミステリアスな役割

ただの学園ラブコメかと思いきや、本作の根幹にあるのが“願いを引き渡す”というファンタジックな要素です。

登場するのは『笑わない猫像』。この像にお供えをすると、自分の“不要なもの”を“必要としている誰か”に渡してくれるという不思議な力を持っています。この設定が、物語に思いもよらぬドラマとサスペンスを加えてくれるのです。

例えば、陽人は「建前をなくしたい」と願ったことで本音を隠せなくなり、月子は「感情を表に出したくない」と願って無表情になってしまいます。その結果、彼らは自分が望んだものの代償として、大切な何かを失ってしまうのです。

この“願いと代償”の構図が実に巧妙で、見る者に「本当に欲しいものは何なのか?」「失ったものは本当に不要だったのか?」と考えさせられます。さらに、誰に何が引き渡されたのか分からないというルールが、ちょっとした推理ゲームのような楽しみを生み出しています。

しかも、この猫神様には“引き渡す”タイプと“引き寄せる”タイプの2種類がいるというトリックも終盤で明かされ、ラストに向けて物語が一気に深みを増していく展開は圧巻でした。

コメディに潜む涙の伏線――“思い出”と“記憶”が紡ぐ切ない真実

最初はテンポの良いギャグと可愛いキャラに惹かれて見ていた本作ですが、終盤に向かうにつれて思わぬ方向に心を揺さぶられていきます。

とくに注目したいのが、陽人がなぜ「忘れっぽい」のかという謎です。この点については、後半の“過去編”で明らかになりますが、これがもう涙なしでは見られません。

陽人はかつて、筒隠姉妹を助けるために自らの「思い出」を猫像に引き渡した過去があったのです。人の幸せを願って自分の大切な記憶を手放す――そんな優しさと覚悟が、あの“変態”な彼の本質だったというのはあまりに切ない。

そして、そんな陽人の願いを受け取り、ずっと傍にいた月子。彼女もまた、「笑わない」ことで陽人の本当の気持ちに寄り添おうとしていたのかもしれません。

記憶を失いながらも想い合うふたりの姿は、どこか儚く、それでいてとてもあたたかい。最終回での月子と陽人のやりとりには、胸がいっぱいになります。

おわりに:ふざけたタイトルの奥に隠れた、純粋な優しさ

『変態王子と笑わない猫。』というタイトルから、ただのギャグアニメだと思って敬遠していた方。どうか、少しだけその偏見を捨てて、1話だけでも観てみてください。

確かに、最初は笑える変態ギャグが前面に出てきます。けれど、その裏には、他人を思いやる心や、失っても大切にしたい記憶、そして誰かのために願いをかける純粋な優しさが詰まっています。

可愛くて、笑えて、ちょっぴり切ない。
そんな感情のジェットコースターを、たった1クールで見事に描き切った良作アニメです。

あなたもぜひ、『変態王子と笑わない猫。』の世界に迷い込んでみてはいかがでしょうか?
ふざけた変態王子と、笑わない猫の少女が、きっと心をあたためてくれますよ。


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ゲーム制作会社で働いてます。
最新作から過去作まで好きな作品を紹介して、少しでも業界の応援になればと思いつつに書いていこうと思います。 基本的に批判的な意見は書かないようにしています。
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