映画『ザリガニの鳴く頃に』:孤独な少女が愛した湿地と真実の物語
画像は公式サイトより引用:https://www.sonypictures.jp/he/11155000
作品情報
「ザリガニの鳴くところ」 は、ディーリア・オーエンズによるベストセラー小説を原作とした映画です。美しい自然とミステリーが融合した物語で、2021年の本屋大賞翻訳小説部門第1位を受賞するなど、世界中で大きな話題となりました。
キャスト
- カイア :デイジー・エドガー=ジョーンズ(CV:高橋 雛子)
- テイト :テイラー・ジョン・スミス(CV:近松 孝丞)
- チェイス :ハリス・ディキンソン(CV:小林 親弘)
- メイベル :マイケル・ハイアット(CV:斉藤 こず恵)
- ジャンピン :スターリング・メイサー・Jr.(CV:楠見 尚己)
- トム・ミルトン :デヴィッド・ストラザーン(CV:牛山 茂)
スタッフ
- 監督 :オリヴィア・ニューマン
- 脚本 :ルーシー・アリバー
- 原作 :ディーリア・オーエンズ
- 製作 :リース・ウィザースプーン
- 製作 :ローレン・ノイスタッター
- 音楽 :マイケル・ダナ
- オリジナル・ソング :テイラー・スウィフト
あらすじ
1969年、ノースカロライナ州の湿地帯で、裕福な家庭で育ち将来を期待されていた青年の変死体が発見された。容疑をかけられたのは、‟ザリガニが鳴く”と言われる湿地帯でたったひとり育った、無垢な少女カイア。彼女は6歳の時に両親に見捨てられ、学校にも通わず、花、草木、魚、鳥など、湿地の自然から生きる術を学び、ひとりで生き抜いてきた。そんな彼女の世界に迷い込んだ、心優しきひとりの青年。彼との出会いをきっかけに、すべての歯車が狂い始める…。
公式サイトより引用:https://www.sonypictures.jp/he/11155000
感想
壮大な湿地の自然が広がる舞台。そこで暮らす一人の少女カイアの壮絶な人生を描いた映画『ザリガニの鳴く頃に』。ただのサスペンスかと思いきや、心に刺さるヒューマンドラマと自然との深い絆が、観る者を物語の中に引き込みます。裁判劇の緊張感と、過去のカイアの生きざまが交互に描かれる構成は、まるでパズルのピースをはめるような感覚。
壊れていく家族、ひとりぼっちの少女
物語は、湿地で発見された青年チェイスの変死体事件から始まります。そしてその容疑者として疑われたのが“沼地の娘”と呼ばれるカイア。そんな彼女が、自分の人生を弁護士に語る場面から過去が浮き彫りにされていきます。
冒頭に映るのは、笑顔あふれる幸せな家族。でも、それは幻想に過ぎません。暴力的な父に耐えきれず、母も兄弟もカイアを置いて去り、彼女は幼いながらもたった一人で生き抜くことを強いられます。町の人々から偏見の目を向けられながらも、親切な数人の助けを借りて、湿地を先生としながらたくましく成長するカイアの姿は、胸に迫るものがあります。
自然が教えてくれた、人生の意味
この作品の最大の魅力は、美しい自然描写とそこから紡がれる言葉の数々。動物や植物を通じて語られるセリフは、彼女の心情や生い立ちを深く掘り下げていると感じました。
- 「一番の理解者は“自然”」
- 「湿地は光の世界」
- 「自然は常に変わりゆく」
こういった言葉の一つ一つが、彼女の孤独と強さ、そして自然との深い絆を象徴しています。特に「湿地は死を悲劇にしない」というフレーズは、彼女の人生そのものを表しているようで、じんわりと胸に沁みました。
デイジー・エドガー=ジョーンズの圧巻の演技
カイアを演じるデイジー・エドガー=ジョーンズの存在感が、映画をさらに輝かせています。その瞳に宿る純粋さ、心の奥に秘めた強さ、そして時折見せる優しさ。彼女が演じるカイアは、まさに孤独の中で生き抜いてきた少女そのものです。初めて彼女を観る方も、この演技だけで心を掴まれるはず。
映像美とノスタルジー
湿地の自然は、この映画のもう一つの主役です。まるでジブリ映画のような懐かしさを感じる風景は、壮絶な人生を描く中で癒しのひとときを提供してくれます。また、舞台となる1962年当時のファッションや小物も可愛らしく、観ているだけでその時代にタイムスリップしたような気分に。
中でも、羽を渡し合うシーンはこの映画のハイライトと言っても過言ではありません。湿地の静けさと、そこで生まれるロマンチックなひととき。これまでの辛い展開を吹き飛ばすような、美しい感動が待っています。
まとめ:湿地が教えてくれる“生きること”
『ザリガニの鳴く頃に』は、ただのサスペンスではありません。孤独な少女が自然とともに成長し、生き抜いていく姿を描いた力強い物語です。その中で描かれる自然の美しさや哲学的なメッセージは、観る者の心に深く残ります。
2時間5分と少し長めではありますが、観終わった後に「人生とは?」と考えさせられるような重厚な余韻が待っています。デイジー・エドガー=ジョーンズの名演技と湿地の美しさに浸りたい方、ぜひこの作品を手に取ってみてください。