ネットに生きる、もう一つの私――アニメ『ネト充のススメ』で見つけた優しい世界

作品情報
『ネト充のススメ』は、黒曜燐さんによる漫画が原作で、2017年にアニメ化された作品です。現実世界ではちょっと残念な大人が、ネットゲームの世界でキラキラ輝く、共感度高めのネトゲ恋愛コメディなんです。
主人公は、30歳で会社を辞めて「ネトゲ三昧のニート生活」を選んだ、生粋のネトゲ廃人・森子(もりこ)。会社員時代に溜まったストレスから解放され、心ゆくまでネットゲーム『Fruits de Mer』の世界に没頭します。
そこで彼女が選んだキャラクターは、イケメン剣士の「林(はやし)」。オンラインの世界で、コミュニケーション能力の高い「林」として、ネトゲ内で気の合う仲間たちと出会い、楽しい日々を送るんです。特に、美人ヒーラーの「リリィ」とは、性別を隠しながらも心を通わせていきます。
そんなある日、森子はリアルで、とあるイケメンエリート会社員と出会います。彼の名前は桜井優太(さくらい ゆうた)。偶然の出会いが重なり、二人は現実世界でも交流を深めていくのですが、なんとこの桜井さん、森子がネトゲで交流している「リリィ」の正体だった!
現実世界とネトゲの世界、それぞれの顔を持つ二人が、お互いの正体を知らないまま少しずつ距離を縮めていく、「ネトゲあるある」や「大人の引きこもりあるある」が満載で、共感したり、クスッと笑えたりする場面がたくさんあります。ネトゲ内での友情や、不器用な二人の恋の行方から目が離せない作品です!
あらすじ
盛岡森子(♀)、30歳・独身・ニート。
現実(リアル)世界からドロップアウトしました。
安息の地を求め、たどり着いた先は—–ネット世界!!「世の中クソだな」
脱サラニートとなった”盛岡森子(もりおかもりこ)”は、
充実した生活を求めてネットの世界へと旅立った!たどり着いた場所は、
ネットゲーム—-通称“ネトゲ”。
ネトゲ世界では、サラサラヘアーの爽やかイケメン”林(はやし)”として新たな生活を始めた森子。
初心者丸出しで死にまくっていたところ、可憐な少女“リリィ”が救いの手を差し伸べる。
「天使だコレーーーーッ!!!!」
リリィとの出会いをきっかけに信頼する仲間もでき、充実していくネトゲ生活。
そんな中、リアル世界では、謎の金髪碧眼・イケメンエリート会社員の”桜井優太(さくらいゆうた)” と衝撃的な出会いを果たす。彼との出会いで変わり始める現実世界、その影響はネトゲにも!?
果たして森子の“ネト充”生活はどうなってしまうのか!!ホンモノの“充実”を求めて——–
ネットとリアルが交差する世界に、君もログイン!
感想
「もう無理…会社辞めたい…」と、ふと思ったことはありませんか?
忙しさに追われ、他人との距離に疲れ、どこかで心がすり減ってしまう。そんなとき、「全部投げ出して好きなことだけして生きたい」と願うのは、決して甘えじゃないはずです。
そんな思いを抱えた人に、ぜひ観てほしいアニメがあります。それが2017年に放送された『ネト充のススメ』。
会社を辞め、ニートになった30代独身女性・盛岡森子(もりおか もりこ)が、ネットゲームの世界に飛び込み、そこで“もう一つの自分”を生き始める…という物語です。
現実では不器用で冴えない森子が、ゲームの中ではイケメンアバター「林(はやし)」として、仲間と絆を育み、ときにドキドキするような恋愛模様も繰り広げるこの作品。
「現実がしんどい」「ネットが居場所だった」という経験がある人には、グサグサ刺さる共感と、心がほっと温かくなる優しさに満ちています。
それではこの『ネト充のススメ』の魅力を、3つのポイントに分けてご紹介します。
ネトゲ世界に広がる“もう一つの人生”
『ネト充のススメ』最大の特徴は、現実とネットを対比しながら、どちらにも「生きる意味」があると描いていることです。
主人公・盛岡森子は、過酷な会社勤めに疲れ果て、自ら退職。そして今は無職。そんな森子が現実逃避として選んだのはMMORPG「Randgrid Online」。
男性キャラの「林」としてゲームを始めた森子は、初日に美少女キャラ「リリィ」に助けられ、ギルド仲間と出会い、次第にゲームの中に居場所を見出していきます。
ネットでは誰も彼女を“冴えない30代ニート”とは思わず、頼れるイケメン「林」として仲間と関係を築いていく森子。
この「ネットでは自分になれる」「現実とは違う居場所がある」という描写が、すごくリアルなんです。
ゲームの中で仲間とチャットしながら笑ったり、夜更かししてしまったり。気づけば朝の5時で、「やば、もう寝なきゃ…」なんて後悔したり…。
ネトゲ経験がある人なら「あるある!」とうなずきたくなるシーンばかりです。
一方、ネットの向こう側にいる「リリィ」の中の人――桜井優太は、なんと現実で偶然出会う人物でもあります。
男女がネットとリアルで“中身逆”の状態で交流していくラブコメ展開もユニークで、まさに「ネットでしか出会えなかった関係」が物語の中核を担っています。
ネカマとネナベが織りなすラブコメの妙
この作品がラブコメとしてとても面白いのは、「性別を入れ替えたキャラ同士のやり取り」によるギャップとズレにあります。
森子は女性だけどゲームでは男性キャラ「林」。
桜井は男性だけどゲームでは女性キャラ「リリィ」。
この二人がネット上で親密な関係になっていく一方、現実でも少しずつ距離を縮めていきます。ですが、どちらもお互いの“中の人”が誰なのか気づかない。
視聴者だけがその事実を知っているからこそ、「バレそうでバレない」ハラハラ感がたまりません。
森子がゲーム内でリリィに悩みを相談しているのも、実は現実で関わっている桜井本人。
リリィ(=桜井)は、林(=森子)に「彼女(=自分)との食事の誘いを断ったこと」を聞かされる、というなんともややこしいやりとり。
まさに“ネットとリアルのすれ違い”が醍醐味の一つです。
しかも森子は、社交性ゼロの引きこもり気質。そんな彼女を自然体で受け入れてくれる桜井は、まるで陽だまりのような存在です。
森子が風邪で寝込んだ時に、桜井が静かに涙を拭ってくれる描写なんかは、「なんて優しい世界なんだ…」とホロリ。
この2人、全然進展しそうでしないんですけど、それがまた尊い。
30代の男女が、不器用ながらも少しずつ心を開き、素直になっていく様子には、ただのラブコメではない「人生の味わい」みたいなものを感じさせます。
現実と向き合う強さ、ネットに癒される優しさ
『ネト充のススメ』は、「ネットに逃げ込むこと」を決して否定しません。
むしろ、「そういう生き方もある」と優しく認めてくれる作品です。
森子は決して明るくもポジティブでもなく、人付き合いも苦手。
でも、ゲームの中で人と繋がり、少しずつ自己肯定感を取り戻していきます。
ギルドの仲間たち――藤本さん、ライラックさん、ポコ太郎さん、ヒメラルダさん…どのキャラも実は現実での顔があり、それぞれが「ネットでは素になれる」ことで救われている。
そんな描写も、現代を生きる私たちにとってリアリティがあります。
ラストでは、森子が「もう一度、ちゃんと現実と向き合おう」と決意する展開も描かれ、ネットと現実の“どちらか”ではなく、“どちらも大切”というメッセージが伝わってきます。
リリィ=桜井との恋が進展しそうでしないじれったさ、仲間たちのさりげない優しさ、そしてなにより、ネットという仮想空間で得られる“救い”や“つながり”が、温かく心に残ります。
おわりに:不器用でも、自分らしく生きていい
『ネト充のススメ』は、全10話という短さながら、濃密で丁寧なストーリー展開が魅力です。
ネットとリアル、性別のギャップ、不器用な恋、社会への違和感…現代人が抱える悩みや孤独を、ユーモアと優しさで包んでくれる、まさに“癒しの一作”。
森子と桜井の恋は始まったばかり。でも、そのゆっくりとした歩みにこそ、私たちの人生にも通じるリアルがあります。
自分を偽らず、それでも誰かと繋がりたい。そんな想いを持つすべての人に、この作品はそっと寄り添ってくれるでしょう。
“ネト充”という言葉に、少しでも「いいな」と思ったあなた。
今夜は『ネト充のススメ』で、もう一つの人生を体験してみてはいかがでしょうか?
スタッフ・キャスト
キャスト
- 盛岡 森子 / CV:能登麻美子
- 桜井 優太 / CV:櫻井孝宏
- 小岩井 誉 / CV:前野智昭
- 藤本 和臣 / CV:寺島拓篤
- 林 / CV:鈴木崚汰
- リリィ / CV:上田麗奈
- カンベ / CV:中村悠一
- ライラック / CV:相坂優歌
- ぽこたろう / CV:寸石和弘
- ヒメラルダ / CV:八木隆典
- Nico / CV:藤森多哉
スタッフ
- 原作 / 黒曜燐
- 監督 / 柳沼和良
- シリーズ構成 / ふでやすかずゆき
- キャラクターデザイン / 海島千本