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SF

『青ブタ』大学生編が突きつける、大人になれない僕らの“未練”――「思春期症候群」は、まだ終わらない

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tarumaki

作品情報

本作は、高校卒業を控え、恋人の麻衣や仲間たちと穏やかな聖夜を過ごそうとする咲太の前に、再び「思春期症候群」の影が忍び寄る物語です。

最大の魅力は、これまでの物語で描かれてきた「誰かのために自分を犠牲にする」という優しさの在り方を、もう一段深い次元で問い直す構成にあります。
サンタクロースという「奇跡」を象徴する言葉の裏で、咲太が直面する過酷な選択と、それを支える仲間たちの絆。冬の冷たく澄んだ空気感の中で、愛する人の幸せを願うことの切なさと尊さが、観る者の心に深く温かな灯をともす一作です。

あらすじ

思春期症候群――
不安定な精神状態によって引き起こされると噂の不思議現象。

高校時代に様々な思春期症候群を発症した少女たちに出会ってきた
“梓川咲太”も大学生になった。

国民的人気女優であり、恋人の“桜島麻衣”と共に
金沢八景にある大学に進学した彼は、
校内で季節外れのミニスカサンタを見つけた。

驚いた。わたしのこと見えてるんだ。

どこかで聞いたような台詞。
思春期症候群をプレゼントしていると話すミニスカサンタは、咲太に告げる。

……わたしはね、霧島透子って言うの

SNSで流行する予知夢、正体不明のネットシンガー、ポルターガイスト、
謎めく現象と共に、心揺れる少女たちとの不可思議な物語が再び始まる。

思春期は終わらない――

サンタクロースを信じなくなったのは、いつからだろう

「サンタクロースなんていない」 そう気付いた瞬間、私たちは少しだけ大人になり、同時に何か大切なものを失ったような喪失感を覚えます。

『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』。 大ヒットシリーズ『青春ブタ野郎』の待望の続編であり、舞台を高校から大学へと移した新章の幕開けです。 正直に申し上げましょう。「大学生になってもまだ“思春期”症候群なのかよ!」というツッコミは、視聴者全員が一度は抱いたはずです(笑)。 しかし、蓋を開けてみればどうでしょう。 そこで描かれていたのは、高校時代よりもさらに複雑で、ほろ苦く、そして誰もが共感せずにはいられない「大人になりきれない大人たち」の物語でした。

高校生の頃は特別だった自分が、大学デビューと共に埋没していく感覚。 何者かになりたかったけれど、何者にもなれなかった焦燥感。 そんなリアルな痛みを、「#夢見る」というSNS現象や、正体不明の歌姫・霧島透子、そしてミニスカサンタという「怪異」を通して鮮やかに描き出す手腕は、さすがの一言です。

今回は、シリーズ完結へ向けて加速する本作について、ベテランコラムニストの視点からその老獪な構成と、新たなヒロインたちが織りなすドラマの深淵を紐解いていきます。

大学生編という“延長戦”が描く、集団の中の孤独と正義

本作のテーマの一つに、「集団への同調圧力と、そこからの脱却」があるように感じます。 特に印象的だったのが、赤城郁実のエピソードです。 かつて咲太がいじめられ、孤立していた時、何もできなかった彼女。それは「クラスの空気」という名の怪物に抗えなかったからです。 しかし、大学生になった彼女は、中学の同窓会という閉鎖的な集団の中で、ある行動を起こします。 かつての自分を反省し、過去の過ちを正そうとするその姿に、私は「正義」を見ました。 集団に流されることの楽さと、それに抗うことの難しさ。これは学生だけでなく、社会に出た私たちにも突き刺さる普遍的なテーマです。

また、広川卯月や姫路紗良といった新ヒロインたちも、それぞれの「居場所」や「役割」に悩み、もがいています。 アイドルグループの中での自分の価値、塾講師と生徒という関係性の中での自分。 彼女たちの悩みは、高校時代のそれよりも切実で、解決策が見えにくい分、より深く視聴者の心に爪痕を残します。

盤石の正妻・桜島麻衣と、成長した咲太の“夫婦感”

シリーズを通しての絶対的ヒロイン、桜島麻衣さんの存在感は今作でも健在……いや、さらに増しています。 大学生になり、免許を取得して咲太をドライブに連れ出すシーン。 あの車内に流れる空気感は、もはや付き合いたてのカップルというより、熟年夫婦の域に達していました(笑)。 次々と現れる新ヒロインたちから直球のアプローチを受ける咲太ですが、麻衣さんの手綱さばき(ホールド感)の前には、浮気の心配など微塵も感じさせません。 年上彼女ならではの余裕と包容力、そして時折見せる可愛らしさ。 「やっぱり麻衣さんが最強」と再認識させられるのも、本シリーズの醍醐味でしょう。

一方の咲太も、塾講師のアルバイトを通して確かな成長を見せています。 生徒たちに勉強を教え、悩みに寄り添う姿からは、かつて自身が悩み苦しんだ経験が糧になっていることが伝わってきます。 妹の花楓もファミレスで元気にバイトをしており、彼らの「日常」が着実に前に進んでいることに、親戚のおじさんのような感慨を覚えずにはいられません。

ミニスカサンタと霧島透子――残された最大の謎へ

そして、本作の鍵を握るのが、特定の人間にしか見えない「ミニスカサンタ」と、謎の歌姫「霧島透子」です。 みんなに思春期症候群(プレゼント)を配って歩くサンタクロース。 その存在自体が、「信じなくなった大人たちへの皮肉」のようでもあり、同時に「かつての夢を思い出させる救済」のようでもあります。 演じる上田麗奈さんの演技も絶品で、神出鬼没でウザ絡みギリギリのラインを攻めつつ、どこか憎めないキャラクターを見事に確立していました。

物語は、霧島透子の正体が完全には明かされないまま、来年公開の劇場版へと続きます。 「思春期症候群はまだ終わっていない」 このメッセージは、作中のキャラクターだけでなく、『青ブタ』という作品が終わってほしくない私たち視聴者の「未練」をも救済するメタファーのようにも感じられます。

果たして霧島透子とは何者なのか? 咲太と麻衣の未来はどうなるのか? 全ての謎が解き明かされる完結編まで、私たちはまんまと制作陣の掌の上で転がされ続けるのでしょう。 でも、それもまた心地よい。そう思わせてくれるのが、『青ブタ』という作品の凄みなのです。

まとめ:来たるべき「完結」に向けて、僕らは再び夢を見る

『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』は、単なる続編ではありません。 高校生編で綺麗に終わることもできた物語を、あえて大学生編へと拡張し、大人になる過程での痛みや未練を描き切ることで、シリーズとしての深みを一段階押し上げました。

CloverWorksによる安定した作画、精鋭声優陣による熱演、そしてConton CandyによるOP『スノウドロップ』や、ヒロインたちが歌い継ぐED『水平線は僕の古傷』といった楽曲群。 これら全ての要素が高いレベルで融合し、私たちを再び「不思議のカルテ」の世界へと誘ってくれます。

シリーズ完結となる次作劇場版。 どんな結末が待っていようとも、咲太たちの青春の行方を最後まで見届ける覚悟はできています。 みなさんも、ぜひ劇場で一緒に「夢」を見ましょう。

スタッフ・キャスト

キャスト

スタッフ

(C)2018 鴨志田 一/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/青ブタ Project

ABOUT ME
tarumaki
tarumaki
ゲーム制作会社で働いてます。
最新作から過去作まで好きな作品を紹介して、少しでも業界の応援になればと思いつつに書いていこうと思います。 基本的に批判的な意見は書かないようにしています。
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