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アニメ

『波打際のむろみさん』―博多弁と人外ギャグが炸裂する海辺のショートコメディ

波打ち際のむろみさん
tarumaki

作品情報

『波打際のむろみさん』は、名島啓二さんによる漫画が原作で、2013年にアニメ化された、ちょっと変わった日常系コメディです。

この作品の魅力は、むろみさんと、彼女の周りに集まってくる、個性豊かな海の生き物(人魚や河童、クラーケンなど!)たちが繰り広げる、ゆるくてシュールな日常です。漁業問題や環境問題といった、社会的なテーマも、コミカルなギャグを交えながら描かれています。むろみさんの残念な可愛らしさと、彼女を取り巻く賑やかな仲間たちとのやり取りが、見ていてクスッと笑える作品です!

あらすじ

春に会えるとよ――。
ある日、釣りが大好きな高校生・飼場拓郎が釣り上げた大物は、ツインテールの美少女人魚・むろみさんだった。
週刊少年マガジンにて大人気連載中のギャグ漫画がまさかのアニメ化!
博多弁を流暢に操るむろみさんを福岡出身の田村ゆかりが演じる他、
同じく博多弁のひぃちゃん役には福岡出身・野中藍、小倉井のリヴァイアさん役には北九州出身・中原麻衣と、 脇を固める配役にも抜かりなし。
また、アニメーション制作を担当するのは、『スケットダンス』でお馴染みのタツノコプロと新進気鋭の若手監督、 吉原達矢の強力タッグ!加えて、キャラクターデザインは貞方希久子(『怪物王女』)が務める。
さらに、むろみさんの親友・隅田さん役でもある、今人気沸騰中の声優、 上坂すみれが歌う主題歌「七つの海よりキミの海」にも注目だ。
むろみさんが! 富士さんが! イエティが! ハービーが!ところせましと駆けまわる、 異生物交流コメディ!

懐かしさと新しさが同居するショートアニメ!

アニメ『波打際のむろみさん』を観ると、まず感じるのは「どこか懐かしい」感覚です。餅のようにカーブするほっぺ、主張の強いまつ毛、派手な髪色――90年代の夕方アニメを思い出させるキャラデザインに、自然と胸がくすぐられます。そこに加わる博多弁のセリフ回しが作品全体に親しみやすさを与え、まるで近所の世話焼きお姉さんと会話しているような錯覚を覚えるのです。

15分という短い時間の中に、神話とギャグ、ロマンとバカ騒ぎをぎゅっと詰め込み、あっという間に終わってしまう。気づけば「もう一話」と手が伸びる、中毒性の高いショートコメディです。

呑んべえ半魚姐さん・むろみさんの魅力

主人公むろみさんは、海で釣りをする少年・拓朗が釣り上げてしまった人魚です。呑んべえでおしゃべり、武勇伝も地球の歴史級というスケール感の持ち主。けれども見た目は派手ギャル風で、中身は世話焼きで寂しがり屋というギャップが何とも愛らしい。

ときに純情、しかし元カレ(大昔のハクジラ類)への恨みを語るときは完全にヤンキーのノリ。陸に上がりすぎて尾ひれが痛むと「心配なんかされなくていい!」と突っぱねる反面、仲間を放っておけない面倒見の良さもある。そんな「強がりだけど憎めない」姿に、自然と応援したくなるのです。

博多弁のリズミカルなセリフ回しも大きな魅力です。地元民でなくとも、その方言の温かみと勢いに引き込まれ、むろみさんのキャラ性をより強烈に感じさせます。

短尺だからこそ光るテンポの良さ

『波打際のむろみさん』は1話約15分。『森田さんは無口。』『ポヨポヨ観察日記』のようなショートアニメ系統ですが、この時間配分が実に絶妙でした。

5分では物足りない、30分では冗長になる――その中間である15分に、ギャグと神話パロディ、動物や妖怪の登場をテンポよく詰め込んでくる。特にクラゲやセミなど、一見モブのような生き物にまで声を当て、妙にくぐもったクセのある声で喋らせるセンスには脱帽です。

また、シーラカンスのトラウマ回や、リュウグウノツカイの就職ネタなど、馬鹿馬鹿しいのに妙に心に刺さるエピソードもありました。ギャグの連打だけではなく、時折しんみりとした瞬間を挟み込むことで、短尺ながらも飽きがこない作りになっていました。

豪華キャストとクセになる音楽

短編ながら声優陣は豪華で、方言混じりのセリフをテンポよく演じ分けてくれます。特にむろみさん役の田村ゆかりさんは、甘さと毒舌、酔っ払いテンションからロマンチストな吐露までを自在に操り、キャラに命を吹き込んでいました。

そして忘れてはならないのがOPテーマ。「むろみぃぃぃ!」のフレーズは一度聴けば耳に残り、飛ばせなくなるほどクセになる曲です。映像とのシンクロも抜群で、作品のバカバカしさと愛おしさを凝縮したようなOPでした。

キャラたちも実に個性豊かです。リヴァイアサンやイエティ、河童や宇宙人まで勢揃い。神話や伝説をこれでもかと持ち込みつつ、ギャグに落とし込んでしまうセンスの自由さ。人間キャラはほとんど拓朗だけという「人外だらけ」の構成も独特で、視聴者を飽きさせません。

まとめ:人を選ぶが、刺さる人には深く刺さる名作ショートコメディ

『波打際のむろみさん』は、見る人を選ぶアニメです。実際、周囲の友人には「よく分からなかった」「つまらない」と切り捨てた人もいました。しかし一度ツボに入れば、他のどんなアニメにもない笑いと懐かしさ、そして妙な温かさを届けてくれる稀有な作品です。

豪華キャストによる博多弁の応酬、クセになるOP、15分という短尺ならではのスピード感。全部が全部、他のアニメにはない「むろみさん」ならではの魅力です。

波止場で交わされる人外たちのバカ話に、きっとあなたも笑い、そして少し切なくなるはず。ショートアニメの隠れた名作として、『波打際のむろみさん』をぜひ一度手に取ってみてください。


スタッフ・キャスト

キャスト

スタッフ

©名島啓二・講談社/波打際のむろみさん製作委員会

ABOUT ME
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tarumaki
ゲーム制作会社で働いてます。
最新作から過去作まで好きな作品を紹介して、少しでも業界の応援になればと思いつつに書いていこうと思います。 基本的に批判的な意見は書かないようにしています。
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