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映画

『ビーキーパー』「俺が法律だ!」――ジェイソン・ステイサムという天災が社会の腐敗を吹き飛ばす

ビーキーパー
tarumaki

作品情報

リミッター全面解除の 無敵ヒーローが
死の果てまで追いかける 痛快リベンジアクション

これまで犯罪組織、 悪徳警官、巨大ザメなど
数々の強敵と戦ってきた ジェイソン・ステイサム。 

今回立ち向かうのは、
弱者から金をだまし取る 地上最悪の組織的詐欺集団。 

その詐欺集団に 全財産をだまし取られた恩人の復讐のため、
そして世界の秩序を守るため、
怒りの炎を燃やす “ビーキーパー(養蜂家)”が、
スクリーン狭しと暴れまわる!

あらすじ

アメリカの片田舎で静かな隠遁生活を送る養蜂家。

ある日、彼の恩人である善良な老婦人がフィッシング詐欺にかかり、
全財産をだまし取られた末に自ら命を絶ってしまう。

詐欺組織への復讐を誓った養蜂家は、
かつて所属していた世界最強の秘密組織“ビーキーパー”の力を借り、
怒涛の勢いで事件の黒幕へと迫っていく。

その先に立ちはだかるのは、
この国では絶対に誰も手が出せない最高権力の影。
それでも養蜂家は何も恐れず前進し、
社会の秩序を破壊する害虫どもを完膚なきまでに駆除し続ける。

そしてついに、彼が辿り着いた最大の“悪の巣”とは――?

感想

新年早々、劇場で観たアクション映画『ビーキーパー』が、想像以上に痛快かつ意味深な一撃を叩き込んできました。主演は、無敵の男ジェイソン・ステイサム。しかも彼が演じるのは、なんと“養蜂家”。一見ほのぼのとした職業設定に見えますが、もちろんそんな平穏で済むはずもなく――。詐欺によって命を絶たれた隣人のため、静かな復讐者が再び立ち上がる!
その姿はまさに「殺人マシンにナメた態度を取ったらこうなる」の見本市。今回は、怒れる養蜂家アダム・クレイの暴走(いや、正義)を描いた本作の魅力を、3つの視点からたっぷり語っていきます。

「やめとけ、そいつはステイサムだ」――暴走する養蜂家の説得力

本作の最大の魅力は、やはりジェイソン・ステイサムの圧倒的フィジカルと無敵感。序盤、暗い納屋でスズメバチの巣を駆除するカットからしてすでに「この人ただ者じゃない」感が溢れ出ているのですが、案の定ただの養蜂家ではありませんでした。
彼の正体は、国家の秘密組織「ビーキーパー」の元エージェント。養蜂家という設定が、そのまま“社会の巣を守る者”という比喩になっているのが面白く、物語のテーマともリンクします。

ストーリーの導火線になるのは、優しかった隣人の老婦人がサイバー詐欺の被害に遭い、自ら命を絶ってしまうという事件。そこからクレイの怒りに火が付きます。
この導入が秀逸なのは、過剰な説明をせず、「あなただけが優しくしてくれた」という一言にすべてを込めている点。クレイの復讐は私怨ではなく、社会的弱者を見過ごせないという“倫理”から始まっているのです。

また、アクションシーンの設計がとにかく痛快。何人がかりで襲おうが、FBIが包囲しようが、裏口から颯爽と現れるステイサム。悪役に「3秒以内に消えろ」と言われれば、相手より先に3数えて撃つ。駆け引き?何それ?というレベルで、物理と決意の暴力で道を切り開いていくのが清々しいほどに潔いです。

「正義の在り方を問うビジランテ譚」――蜂の巣と国家の構造比喩

『ビーキーパー』がただのアクション映画に留まらない理由のひとつが、社会構造に対する寓意性です。
「ビーキーパー(養蜂家)」という言葉が、そのまま国家の安寧を陰で支える存在を意味している点が象徴的。蜂の社会が秩序と協調の象徴であるように、クレイの行動もまた「弱き者を守る」ための秩序回復なのです。

復讐の過程でクレイが暴いていくのは、個人レベルの詐欺事件から始まって、国家規模の腐敗と搾取の構造へと広がっていきます。社会に潜む「捕食者たち」を暴き出し、その中枢へと迫っていく展開は、まさに現代のビジランテ映画にふさわしいスケール感。
しかも、クレイが行使する暴力には一貫した「選別」があり、誰でも殺すわけではありません。倫理と信念に従った暴力だからこそ、ただの破壊ではなく“正義の執行”として成立しているのです。

クレイを追うFBIのヴェローナ(エミー・レイバー=ランプマン)もまた、体制側と市井の狭間で葛藤する存在として印象的。彼女は最終的に「撃たない」という選択をします。これにより、クレイの暴力が単なる犯罪ではなく、「正義の問いかけ」であったことが暗に証明されます。

「リアルな暴力、象徴的な映像」――映像美と演出で魅せるステイサム無双

本作を語るうえで外せないのが、デヴィッド・エアー監督と撮影監督ガブリエル・ベリスタインによる緻密な映像設計。
田舎の養蜂場は、暖かみのある色調と穏やかな構図で、クレイの静かな暮らしと内面の平穏を象徴。対して、都市部や詐欺グループの拠点は、飽和した色彩と騒がしい構図で、混沌と腐敗を視覚的に表現しています。このコントラストが物語の構造と見事に呼応しているのです。

アクションシーンにおいても、CGに頼らず、肉体の重量感と現実感に満ちた描写が主軸。特に鏡張りの廊下での戦闘シーンは、視覚的にも意味的にも優れた一場面。クレイの信念と冷徹さが、反射される映像の中に象徴的に描かれており、ただのアクションとして見過ごせない演出になっています。

加えて、リアルな質感を出すためにファウンド・フッテージ風のカメラワークや、手持ち撮影も導入。荒々しくもリアルな戦場のような臨場感が、クレイの行動に説得力と共感を与えています。つまり、観客は「やりすぎだろ」と思いながらも、「でも誰かがやらなきゃいけない」と納得させられてしまうのです。

最後に

『ビーキーパー』は、ジェイソン・ステイサムがただ暴れ回るだけの映画ではありません。彼の演じるアダム・クレイは、現代社会における倫理や正義の在り方を体現する存在であり、蜂の巣のような社会に巣食う悪を駆除する“静かなる守護者”です。
もちろん、ステイサム無双の痛快さは言うまでもなく、頭を空っぽにしても楽しめる娯楽作品としても一級品。でも、その奥にある「弱者を見過ごすな」という倫理的メッセージが、観た後の余韻としてしっかりと残ります。

新年一発目にふさわしい、力強くて誠実なアクション映画。
「俺が法律だ!」と言わんばかりに暴れまわるステイサムを見ながら、あなたも少しだけ「正義とは何か」に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。


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ゲーム制作会社で働いてます。
最新作から過去作まで好きな作品を紹介して、少しでも業界の応援になればと思いつつに書いていこうと思います。 基本的に批判的な意見は書かないようにしています。
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