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アニメ

『この美術部には問題がある!』──恋と笑いが交錯する、美術室から始まる不器用な青春コメディ

konobi
tarumaki

作品情報

『この美術部には問題がある!』は、いみぎむるさんによる漫画が原作で、2016年にアニメ化された、学園日常系コメディです。「この美(このび)」の愛称で親しまれています。

この作品の魅力は、みずきが、すばるの二次元愛と、彼の天才的な絵の才能に振り回されながら、報われない恋心を抱いて奮闘する姿です。二次元にしか興味がないすばると、三次元の女の子であるみずきの、微妙なすれ違いが、コミカルに、そして可愛らしく描かれています。

あらすじ

内巻くんはデッサンのモデルとして、宇佐美さんに椅子の上に体育座りのポーズをお願いすることに。そんな相談に恥ずかしながらも引き受けることになった宇佐美さん。満更でもない宇佐美さんであったが、内巻くんは全く宇佐美さん自身に興味を示さず、そこに部長も現れ部室は賑やかに…

この部室、カオス。でも、なぜか心が温かくなる。

 『この美術部には問題がある!』を初めて見たとき、まず感じたのは“安心感”でした。
 大きな事件もなく、ドロドロした恋愛もなく、ただ一人の少女のまっすぐな恋と、個性豊かな仲間たちの騒がしい日常が描かれる。けれどその中には、確かに青春のきらめきが詰まっているのです。

 本作は、絵の才能があるのに「理想の二次元嫁」を描くことにしか興味がない少年・内巻すばると、そんな彼に恋をする真っ当な美術部員・宇佐美みずきとの関係を中心に展開する、日常系ラブコメディです。
 内巻の鈍感さに翻弄されながらも、健気に想いを伝えようとする宇佐美さんの姿が、とにかく可愛くて愛おしい。視聴者は、彼女の恋を応援せずにはいられません。

 そして何より、笑いと優しさのバランスが絶妙。ギャグのテンポ、キャラの立ち方、ラブコメ要素のさじ加減──どれを取っても完成度が高く、観ている間ずっと心地よく微笑める、そんな作品です。

「二次元嫁」に恋する男子と、三次元で恋する女子

 『この美術部には問題がある!』の面白さは、まず何と言っても“内巻すばる”というキャラクターの特異さにあります。
 彼は絵の才能に恵まれながら、現実の女性にはまるで興味を示さず、自分の理想の二次元美少女を描くことに全てを捧げるタイプ。ある意味で、究極のオタク男子です。

 しかし、この設定が単なるネタや変人描写で終わらないのが本作の秀逸な点です。内巻の「二次元愛」は、現実への逃避ではなく、創造への情熱として描かれています。
 理想を形にしたいという純粋な想いは、ある意味で宇佐美さんの“恋する気持ち”と同質なのです。彼らは違う方向を向いているようで、実はどちらも“自分の理想を信じている”という点で同じ。だからこそ、この二人の関係は一方通行のようでいて、どこか通じ合っているようにも見えるのです。

 そんな内巻に恋する宇佐美みずき。彼女はまさにこの物語の中心であり、最も輝く存在です。
 内巻を振り向かせようと奮闘しながら、勘違いや照れの連続で自爆してしまう姿が可愛すぎる。ときに彼の鈍感さに苛立ち、でもまた笑顔で向き合う。その繰り返しが愛おしく、観ている側まで頬が緩んでしまいます。

笑いの中にある“リアルな青春”

 本作のコメディ要素は、単なるギャグではなく「キャラクターの魅力を引き出すための装置」として非常に上手く機能しています。
 特に、宇佐美さんのリアクション演技。内巻の発言や行動に対するツッコミ、表情、ちょっとした仕草まで、全てが生き生きと描かれています。

 また、美術部のメンバーたちも個性的で、絶妙なバランスで物語に彩りを添えています。
 中二病美少女・伊万莉まりあ、天然電波娘・コレット、いつも寝てばかりの部長、そして優しいけれど少し頼りない夢子先生──誰もがクセが強く、それでいて憎めないキャラクターです。

 この作品が素晴らしいのは、そうした個性的なキャラたちが“問題児”であることを笑いに変えつつも、誰一人として悪者にしない点です。
 部員たちはみんな少しずつ欠点を持ちながらも、その欠点こそが人間味であり、魅力なのだと気づかされます。まさに「この美術部には問題がある=この人たちは愛すべき存在である」というメッセージなのです。

 さらに、作画の安定感も特筆すべきポイントです。色彩のバランス、光の使い方、キャラの動き。どれも丁寧に作られていて、特に宇佐美さんの表情変化には、スタッフの“愛”を感じます。日常の何気ない瞬間をここまで美しく見せるのは、技術と観察眼の賜物でしょう。

“進展しない恋”が教えてくれる、優しさのかたち

 『この美術部には問題がある!』には、明確な恋の決着はありません。
 内巻は最後まで二次元の世界に夢中で、宇佐美さんの想いは報われることなく物語が終わります。
 でも、不思議と後味は爽やかで、切なさの中にも温かさが残るのです。

 それはおそらく、この作品が「恋の結果」ではなく「恋をしている時間そのもの」を描いているからでしょう。
 思春期の恋は、成就よりも“誰かを想う気持ち”こそが尊い。
 内巻に振り向いてもらえなくても、宇佐美さんは確かに幸せそうに笑っています。その笑顔を見ていると、恋の形はひとつじゃないんだと気づかされます。

 また、彼女の恋を通して描かれる“思春期の不器用さ”が、作品に深いリアリティを与えています。
 好きなのに素直になれず、意地を張って空回りする──そんな経験、誰にでもあるのではないでしょうか。
 だからこそ、宇佐美さんの想いは他人事ではなく、私たち自身の青春を思い出させてくれるのです。

まとめ:問題だらけの美術部。でも、そこには幸せがある

 『この美術部には問題がある!』は、一見すると何も起きない日常アニメですが、そこには確かな“人の温かさ”があります。
 鈍感な男子、頑張り屋の女子、変わり者の仲間たち──そんな不完全な人たちが集まることで、むしろ完璧なバランスが生まれている。

 恋は進展しない。でも、それでいい。
 誰かを好きになること、努力すること、時に空回りして笑い合うこと。そうした時間こそが青春のすべてであり、最も輝く瞬間なのだと、この作品は優しく教えてくれます。

 もし少し疲れた日常に“ほっとする笑い”を求めているなら、ぜひこの美術部を覗いてみてください。
 きっとあなたも、宇佐美さんの笑顔に癒され、内巻くんの鈍感さに苦笑しながら、最後には心が温かくなるはずです。


スタッフ・キャスト

キャスト

スタッフ

(C)2016 いみぎむる/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/この美製作委員会

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tarumaki
ゲーム制作会社で働いてます。
最新作から過去作まで好きな作品を紹介して、少しでも業界の応援になればと思いつつに書いていこうと思います。 基本的に批判的な意見は書かないようにしています。
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